こちらは、インディペンデントボトラーの Edition Spirits がリリースしたベンリアック25年です。シリーズは同社の最上位レンジにあたる「Author’s Series」。特に個性が際立つ樽だけを選び、偉大な作家たちへの敬意を込めてボトリングされるプレミアムシリーズになります。
Edition Spiritsは、「Old Malt Cask(OMC)」で知られる Hunter Laing のアンドリュー・レイン氏が手掛けるボトラーです。看板シリーズである「First Editions」は“初版本”を意味し、時を経て価値を高める書籍の初版になぞらえたネーミングとして知られています。
今回のボトルで注目したいのは、1998年蒸留のベンリアックである点です。
現在のベンリアックは華やかな果実香やトロピカルフルーツの個性で高く評価されていますが、この原酒が造られた1990年代後半は、まだ現代的なスタイルが確立する以前の時代です。麦芽由来の厚み、ナッティな風味、わずかにオイリーな質感を備えた、いわゆる「旧時代のベンリアック」の特徴を残した原酒といえるでしょう。
さらに25年間をシェリー樽で熟成し、ボトリング時のアルコール度数は56.6%。長期熟成による凝縮感とカスクストレングスならではの力強さを兼ね備えています。
香りは焼き色のついたレモンタルトやパイ生地、ジンジャー、マヌカハニー。続いて糖蜜やアーモンド、ドライフルーツのニュアンスが広がります。時間の経過とともにクルミ、古いオーク、ココアを思わせる香りも現れ、複雑な表情を見せてくれます。
口に含むと、レモンメレンゲや蜂蜜を思わせる甘みから始まり、ダークチェリー、黒糖、ドライプルーン、エスプレッソへと変化していきます。シェリー樽の存在感はかなり明確ですが、樽に支配されるのではなく、ベンリアックらしい黄桃やアプリコットを連想させる果実味が奥に残っているのが印象的です。
また、このボトルはストレートだけでなく、加水による変化も楽しみたい一本です。数滴の加水で閉じていた果実香が開き、シェリー由来の重厚さと蒸留所本来のフルーティさのバランスがより鮮明になります。
長熟シェリータイプのモルトは数多くありますが、1990年代のベンリアック原酒を25年という歳月で育て上げたボトルは決して多くありません。蒸留所の個性と樽の個性、その両方をじっくり味わいたい方におすすめしたい一本です。
