クライヌリッシュ35年|蜜蝋と果実がほどける静かな熟成の極み

クライヌリッシュ35年 / Clynelish 35 Years (Signatory Vintage)

Clynelish 35 Years (Signatory Vintage)

35年熟成のクライヌリッシュは、そう頻繁に出会えるものではありません。1972ヴィンテージが市場に現れた当時と重なる、ひとつの到達点ともいえる熟成年数です。こちらはシグナトリー・ヴィンテージ、“シミントンズ・チョイス”より、1990ヴィンテージのシングルカスクになります。

香りは、温かみのあるワクシーさが中心に据わります。パラフィンや蜜蝋に、熟したパイナップルやマンゴーキャンディの甘やかさ。さらに煮詰めたマルメロや洋梨が重なり、ミントやドライフラワーの気配が静かに広がります。バニラケーキのような柔らかな甘みとともに、ほのかに白ワインやスターアニスのニュアンス。磨かれたオークが全体を穏やかに支えています。

口に含むと、フルーティさはそのままに、やや落ち着いた輪郭を見せます。アプリコットや甘い柑橘、再び現れるパイナップル。そこにわずかな樹脂感と、オレンジフラワーウォーターのような上品な香りが重なります。蜜蝋や花粉の要素に続き、アカシアハニーや軽やかなオークスパイス、砂糖漬けのジンジャー。終盤には、ほのかに紅茶を思わせる落ち着きが感じられます。

フィニッシュは長くはありませんが、熟した果実の余韻に穏やかなスパイスが寄り添い、わずかにココアの気配を残して静かに消えていきます。

香りの完成度は際立っています。一方で、味わいは次第に軽やかさを帯びていきますが、この熟成としては、ちょうどいいタイミングでボトリングされた一本だと感じます。