こちらは、エドラダワー蒸留所の1993ヴィンテージ、30年熟成のシングルカスクです。1stフィル・オロロソシェリーバット熟成。総ボトリング562本、日本入荷は40本のみという、かなり限られたリリースになります。
エドラダワーは、スコットランド・ハイランド地方、ピトロッホリー近郊にある小規模蒸溜所です。公式創業は1825年。現在でも初留釜・再留釜を各1基のみで稼働しており、“スコットランド最小規模の蒸溜所”として知られています。
年間生産量は大手蒸溜所とは比較にならないほど少なく、仕込みから蒸留まで、いまも非常に手作業の比率が高いんです。生産スタッフは少人数体制で、一週間に生産されるスピリッツ量もごくわずか。そのため、古くから「幻のモルト」と呼ばれてきました。
20世紀には、主にブレンデッドウイスキー「キングスランサム」の原酒として使用されていました。このキングスランサムは、戦後の外交史にも名が残る銘柄で、ポツダム会談ではチャーチル首相に供された逸話でも知られています。非常にコストのかかる構成だったため1980年代に終売となりましたが、往年の愛好家の間では、いまなお特別な存在です。
2002年からは、インディペンデントボトラーとして著名な Signatory Vintage がオーナーとなり、シングルモルトとしてのエドラダワーの評価はさらに高まりました。シェリー樽熟成との相性の良さでも定評がありますね。
このボトルは、その魅力がかなりはっきり出ています。30年熟成らしい深いダークカラー。グラスに注ぐと、ドライアプリコット、サルタナレーズン、カカオ、古い木箱、湿った葉巻香のようなニュアンス。時間が経つとココナッツや黒糖も出てきます。
口に含むと、濃密なシェリー由来の甘みが広がるんですが、単に重たいだけではなく、酸やタンニンの輪郭がしっかり残っています。ビターチョコレート、デーツ、オレンジピール、さらに古酒特有のワクシーな質感も感じられて、長熟エドラダワーらしい複雑さがあります。
アルコールは56%ですが、不思議と刺々しさは少なく、むしろ香味の厚みを支えている印象ですね。シェリー樽長熟モルトがお好きな方なら、一度は試していただきたい一本です。木箱入りの特別仕様ということも含め、いまの時代ではかなり贅沢なリリースだと思います。
